就業時刻は9時から17時です。ただ、現場が終わる時間はバラバラです。
早く上がれる日もあれば、片付けまで入れて日が暮れる日もあります。決まっているのは時刻ではなく「その日の作業が終わるまで」です。

仕事はそこからです。
事務所に戻って、あるいは家に帰ってから、受注が入った案件ぶんの段取りをします。車での移動中に信号待ちで調べることもあります。終わる時間が読めないので、この段取りの時間も読めません。 ここが、いま社内でいちばん整理できていない部分です。

これから何回かに分けて、この作業をアプリにしようとして、どこで詰まっているかを書いていきます。まだ完成していません。作りながら書きます。
受注が入るたびに発生する3つの作業
受注は週に3件、多い週で8件ほど入ります。1件あたり、短いもので20分。 案件によってはもっとかかります。
そして、この3つは10件中10件で発生します。 「ときどき調べる」ではありません。在庫の確認まで含めて、毎回はじめから調べます。
1. 品番を調べる
どの商品を使うかを決めて、品番を控えます。
これは「カタログから選ぶ」だけの作業ではありません。その商品の規格が、受注した案件に適合するかを調べる作業です。柄合わせなどのリピートはあるか?。下地は何か。既存とつながる部分の見え方はどうか。同じ「クロス」でも、通る品番と通らない品番があります。
2. 材料問屋に発注する
調べて控えた品番を、問屋のフォームやLINE、メールに転記します。
やっているのは転記です。すでにどこかに書いてある品番と数量を、別の場所へもう一度書き写している。問屋ごとに送り先も書き方も違うので、まとめて一度で済ませることもできません。
3. 納期を調べる
材料が案件の納期に間に合うかを確かめます。
これも2段階あります。材料がいつ入るか。そして施工に何日かかるか。この2つを足して、お客様に伝えた日に間に合うかを判断します。間に合わなければ、品番を変えるか、工程を組み替えるか、納期を相談するかを決め直します。1に戻ります。
なぜ夜に回るのか
3つとも、現場作業中にはできません。
手持ちの資料が足りません。現場の最前線にいます。カタログもパソコンも手元にありません。問屋に電話をかけるにしても、こちらが作業を止めることになります。
だから終わってからやる。すると、こうなります。
- 事務所に戻ってからやる → 帰りが遅くなる
- 家に帰ってからやる → 仕事が家に入ってくる
- 車の移動中にやる → 途切れ途切れになり、抜けが出る
どれになるかは、その日の現場しだいです。 予定を立てておくことができません。
時間で書くと、こうなります。
現場が17時に終わったとして、帰るのに1時間。渋滞があればもっとかかります。事務所に着くのが18時。そこからデスクワークが2.3時間ほど。終わるのは20時です。これは早く終わった日の話です。
しかも、デスクワークのなかで段取りの優先順位はいちばん最後です。 見積り、請求、写真の整理が先にあって、段取りは残った時間に回ります。いちばん判断が要る仕事が、いちばん疲れている時間に来ます。
これが、ほぼ毎日です。

本当のコストは残業ではない
残業時間が増えるのは、目に見える分かりやすいコストです。ただ、本当に困っているのはそこではないと思っています。
判断の質が落ちます。

1番の「規格が適合するか」も、3番の「間に合うか」も、判断の仕事です。集中して考えれば5分で結論が出ることが、疲れた頭では出ません。出たとしても、確信が持てないまま発注することになります。
そして、その確認が翌朝に持ち越されます。 現場に着いてから「あれで合っていたか」と気になる。作業しながら考える。また集中が切れる。
問題は「時間が足りない」ではなく、「考える仕事を、考えられない時間帯に押し込んでいる」ことでした。
アプリを作ろうとしている
この3つを、現場にいるあいだにスマホで片付けられないか。そう考えて作り始めたのが、社内で使っている案件管理のアプリです。
理屈としては簡単に見えます。品番を選んだら、そのまま発注の文面になって、納期の判断材料も一緒に出てくればいい。
ところが、作り始めてから詰まったのは技術ではありませんでした。
詰まったのは「言葉にすること」
いまはAIに相談しながら作っています。「こういう画面が欲しい」と伝えれば、動くものが出てきます。速いです。
問題は、こちらが正しく伝えられていないことです。
具体的に、こういうところで詰まります。
頭のなかで「当たり前」になっていることを、省いてしまう。 「品番を調べる」と書いても、それが「規格が案件に適合するかを確かめること」だとは書いていません。自分にとっては説明するまでもないので、言葉から落ちます。落ちたまま作られると、ただの品番検索ができあがります。
例外のほうが多い。 廃番になっている。同等品はあるが色番が違う。在庫があるのは別の問屋。同じ品番でもロットで色が変わる。現場の作業は、例外の処理でできています。 それを全部伝えようとすると、話が終わりません。かといって省くと、使えないものができます。
順番が決まっていない。 1→2→3の順に書きましたが、実際には行ったり来たりします。納期を見てから品番を変えることもあれば、問屋に在庫を聞いてから決めることもある。順番が固定された画面を作られると、現実に合いません。
いちばん厄介なのは、間違った理解でも「動くもの」が出てくることです。
伝え方が悪くても、AIはそれなりのものを作ってくれます。エラーが出れば「違う」と分かりますが、動いてしまうと、違っていることに気づきにくい。 使ってみて数日たってから「これは自分の仕事の形ではない」と気づく。作り直しになります。
いまやっていること
解決したわけではありませんが、手応えのある方法が1つ見つかりました。
抽象化せずに、実際の1件を最初から最後まで書き出す。
「品番を調べる」ではなく、先週の葛飾区のあの部屋で、何を見て、何を調べて、どこで迷って、最後に何を選んだか。時系列で、そのまま書きます。
これをやると、自分が省いていた判断が文字になって出てきます。「ここで在庫を確認してから決めている」というような、書き出すまで自分でも意識していなかった手順が見つかります。
まだ数件ぶんしか書けていません。今のところ、これがいちばん確実です。
続きます
この連載では、次のことを書いていく予定です。
- 品番を調べる作業を、実際に1件ぶん分解してみる
- AIに渡す前に、自分で書き出した内容と、そこで気づいたこと
- 作ってみて、思っていた形と違ったところ
うまくいった話だけを書くつもりはありません。 作り直したところも、そのまま書きます。同じように、社内の仕事をアプリにしようとしている方の参考になればと思います。