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OSノート

アプリ開発

職人が自分で業務アプリを作っている話 ― コミット38回のうち、機能追加より多かったもの

職人が自分で業務アプリを作っている話 ― コミット38回のうち、機能追加より多かったもの
※写真はイメージです(写真AC

この業務アプリ 「anken.ai」 を作っているのは、原状回復の現場に出ている人間です。日中は職人として作業し、そのあとで手を入れています。専業のエンジニアではありません。

なぜ工事会社が自分でアプリを作っているのかは事業内容のページに書きました。この記事は、実際にどう作ってきたかの記録です。手元のコミット履歴(変更の記録)を見返して、正直に書きます。

最初のコミットが「一式」だった

記録の一番古いところに、こうあります。

初回コミット: 業務管理SaaS一式

バージョン管理に入れたのが、作り始めより後だったということです。最初は手元でひたすら書いていて、形になってから記録を取り始めました。

これは真似しないほうがいいところです。最初から記録を取っていれば、「なぜこう作ったのか」がもっと残っていたはずです。いま残っている38回ぶんの記録は、途中からのものでしかありません。

機能を足した回より、名前を直した回のほうが目立つ

履歴を眺めていて、自分でも意外だったのがこれです。

同じページの名前を、3回変えています。

商品マスタ  →  倉庫・商品  →  在庫・商品

案件の状態も変えました。

引き合い  →  見積中

そして、印刷して協力業者に渡す紙の名前も変えました。

施工指示書  →  案件シート

どれも機能は1ミリも増えていません。画面に出る言葉を変えただけです。

それでもやったのは、現場で通じない言葉が混ざっていたからです。「商品マスタ」は、ソフトの世界の言い方です。うちの現場で口に出す言葉ではありません。「引き合い」も、見積を出す前後のどの段階を指すのか、人によってずれていました。

紙の名前を変えたのは特に効きました。「施工指示書」だと、渡された側は指示されていると受け取ります。実際にやってほしいのは、その紙を見ながら一緒に段取りを確認することです。だから「案件シート」にしました。

**言葉が合っていないと、機能がいくらあっても使われません。**これは工事の見積書でも同じだと思っています。

増やすより、減らすほうが難しかった

履歴の中に、こういうものが並んでいます。

  • 案件ページをステータス別にシンプル化
  • 画面のシンプル化 第2弾
  • 準備リストと施工チェックリストを「現場リスト」に統合
  • 案件の状態:4つのボタン → バッジ1つ+確認つきメニュー
  • 鍵の場所欄を撤去(自由記入欄に一本化)

作ったものを消している回です。

「鍵場所」の欄は、自分で作って、自分で消しました。あったほうが便利だと思って足したのですが、実際には自由記入欄に「〇〇不動産で受け取り」と書くほうが早かった。欄が増えるほど、埋めないといけない気がして手が止まります。

ボタンを4つ並べていたところも、押し間違いが怖くて結局どれも押さない、という状態になっていました。1つにまとめて、押したら確認が出るようにしたら、迷わなくなりました。

現場で分かった、地味だけど致命的なこと

3回ぶんの記録が、まるごとこれに使われています。

  • 画面ジャンプ防止を全体に(本文の高さを固定)
  • タブごとにスクロール位置を記憶して復元
  • 本文を固定の高さにして、中だけスクロールさせる

画面が勝手に動くという問題です。

パソコンの前に座って触っているぶんには、たいして気になりません。ところが現場では違います。片手で持って、脚立の上で、手袋のまま見ていることがあります。読もうとした行が読み込みのタイミングで下にずれると、探し直しになります。

もうひとつ、**「元に戻す」**を後から足しました。まとめて発注をかけたり、テンプレートから一気に作ったりする操作に、確認と取り消しを付けています。現場から片手で触っていると、押すつもりのないものを押します。間違えない仕組みより、間違えても戻せる仕組みのほうが現実的だと考えました。

同じことを二度入力しない

もともと、見積の明細を作ったあとに、現場でやる作業のリストをもう一度作っていました。同じことを2回書いています。

そこで、明細から現場リストの下書きを自動で作るようにしました。「クロス張替え 40㎡」と見積に書けば、現場側のチェック項目と材料の見当が付いた状態で出てきます。合っていなければ直します。

このあたりはAIに任せている部分です。ゼロから作らせるのではなく、たたき台を出させて人が直すという使い方に落ち着いています。完全に任せられるほど賢くはないし、まったく使わないのはもったいない、という距離感です。

いま、できていないこと

正直に書いておきます。

  • **開発用と本番用のデータベースが分かれていません。**最初のお客様が入る前に必ず分けます
  • iPhoneでの動作は、まだ作り込みが足りません(画面の対応はしましたが、電波の悪い現場での動きは詰め切れていない)
  • 作りたい機能をまとめたメモが、消えるより増える速さで伸びています

人数が少ないので、開発の速度には限界があります。作れるものより、作りたいもののほうが常に多い状態です。

それでも自分で作っている理由

外に頼めば、たぶんもっと速く、もっときれいなものができます。

それでも自分で作っているのは、「この操作、手袋のままだと押せない」と気づいたその日に直せるからです。仕様書を書いて、見積を取って、次の打ち合わせまで待つ、という手順を挟むと、その気づきはたいてい消えてしまいます。

工事も同じで、その場で気づいたことをその場で直せるかどうかが、仕上がりを分けます。アプリも現場も、そこは変わらないと思っています。


「anken.ai」を外部の建設・内装の会社と職人の皆さまにも使っていただけるよう、準備を進めています。提供の時期と料金はまだお伝えできる段階ではありません。決まりましたら、このOSノートでお知らせします。

技術的な選択についてはSupabaseを選んだ話にも書きました。

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