原状回復の作業中、冷蔵庫を撤去したところで手が止まりました。
冷蔵庫の下だけ、底板にシミが残っていました。 長いあいだ置かれていた場所です。結露か、製氷機の水漏れか、原因までは分かりません。ただ、拭いても取れませんでした。表面の化粧が水を吸って、下地まで色が変わっています。
当初の見積りには入っていない箇所です。 冷蔵庫があったので、見積りのときには見えていませんでした。
そのままにできるか、を先に考える
まず「これは直さなくてよいか」を考えます。
見えない場所ではありません。次の入居者は、必ず冷蔵庫を置くときにここを見ます。 新しい家に入る日に、前の人の跡がはっきり残っている。それだけで印象が変わります。
管理会社さんに写真を送って、追加でお願いしたいと伝えました。その場で写真があると話が早いので、現場で気づいた時点で撮ります。
3つの直し方と、選んだ理由
| 方法 | 費用 | 時間 | 仕上がり |
|---|---|---|---|
| 拭き掃除・洗浄 | ほぼ0 | 30分 | 取れなかった |
| 底板ごと交換 | 高い | 1〜2日 | きれい |
| 上から重ね張り | 数千円 | 半日 | きれい |
底板ごと交換すると、周りの造作を一度外すことになります。カウンターの下は、見えないところで固定されていることが多く、外して戻すだけで半日かかります。この面積のために、そこまでする必要はないと判断しました。
選んだのは重ね張りです。既存の底板は残したまま、その上に新しい板をかぶせます。
使ったもの
5ミリのポリ合板。 表面が白い樹脂で覆われている合板です。水に強く、拭き掃除ができます。5ミリなので、かぶせても段差がほとんど出ません。
厚い板を使うと、冷蔵庫の高さが変わってコンセントやアース線の位置に響きます。この場所では、薄いことがそのまま利点になります。
手順
1. 採寸して切る
奥行きと幅を測って、少しだけ小さく切ります。ぴったりに切ると入りません。左右合わせて3〜5ミリほど逃がします。
2. 下地を拭く
既存の底板の上のホコリを落とします。ここを飛ばすと、あとで浮きます。
3. 両面テープを先に貼る
両面テープを合板に貼って、そのあいだにボンドを打ちます。 両面テープは「押さえておく役」、ボンドは「くっつける役」です。
ボンドは固まるまで時間がかかります。そのあいだ板が動くと、乾いたときにズレたまま固まります。両面テープを先に貼っておくと、置いた瞬間に位置が決まり、あとはボンドが乾くのを待つだけになります。重しを乗せて一晩置く必要がなくなるので、半日で終わります。
ボンドはキッチンパネル用のものを使いました。塩ビや樹脂の面にもしっかり付くタイプです。木工用ボンドでも良いですが、キッチンパネル用の方が強力なので今回はこちらを使いました。
4. 置いて、押さえる
奥から入れて、手前を落とします。全面を手で押さえて物で押さえて密着させました。(今回はマキタのインパクトの箱を置きました)
5. 両サイドをシリコンコーキング
左右の端に、細くシリコンを打ちます。
これは仕上げのためだけではありません。板と壁のすきまに水が入ると、せっかく張った板の裏で同じことが起きます。 入口を塞いでおきます。
かかったもの
今回、この工事のために買ったものはありません。 前回、他の現場の在庫分を使用しました。
材料 5ミリポリ合板(1枚) 約8,000円 ← 在庫から
キッチンパネル用ボンド 約800円 ← 在庫から
両面テープ・シリコン 約1,000円 ← 在庫から
時間 採寸から仕上げまで 半日
ご請求 約12,000円
ポリ合板は半分だけ買うということができないので、仕入れるときは1枚単位です。この板がいま高いのも、前回書いた値上げの影響です。以前はもっと安く入りました。
以前購入したものは建デポで購入しました。
こういう「見積りに入っていなかった小さいこと」は頻繁に出ます。だから在庫を持っています。
これは在庫を抱えるという話でもあります。ただ、買いに行くと半日の工事が1日になります。そして1日かかると言われた時点で、追加工事の話そのものが流れることがあります。材料が手元にあるかどうかで、その場で直せるか直せないかが決まります。
ご請求は、材料に交通費・諸経費・半日ぶんの手間を足したものです。材料代がそのまま工事の値段になるわけではありません。
底板ごと交換していたら、造作を外して戻す手間が加わるので、これでは収まりません。
この工事について思うこと
こういう仕事を、社内では「雑工事」と呼んでいます。名前は雑ですが、扱いは雑にしません。
原状回復の現場では、こういう「見積りに入っていなかった小さいこと」が必ず出ます。 冷蔵庫の下、洗濯機の下、家具の裏。物があるあいだは見えないからです。
大事なのは3つだと思っています。
- 気づいたその場で写真を撮る あとから説明するより早い
- 直し方を複数出して、費用と時間を並べる 選ぶのはお客様
- やらない判断もする 見えない場所なら、そのままでよいこともある
今回は「次の入居者が必ず見る場所」だったので、直すことをお勧めしました。逆に、家具でずっと隠れる場所の小さな傷なら、費用をかけない提案をします。
小さい工事でも、写真を撮って残しておくと、次に同じ場面が来たときに話が早くなります。この記事もその1つです。

