接着剤や副資材の品切れは、ほぼ解消しました。ただし、値段は戻っていません。 材料は5年前のほぼ倍、一方で当社の受注単価は5年前の1割増しにとどまっています。 この差は、いま施工する側が持っています(2026年8月時点)。
材料は5年で倍、単価は1割
「材料が入ってこない」と前回書きました。あれから、状況が1つだけ変わりました。
糊は、入るようになってきました。
体感で8割がたです。止まっていた副資材が動き出して、「クロスはあるのに貼れない」という場面はだいぶ減りました。
ただ、品物が戻ってきたあとに残ったのは、値段のほうでした。
今回の値上げは、これまでと違います

これまでにも値上げはありました。ただ、実際に請求に響いてくるのは、案内の数字より小さいのが普通でした。10%の案内で実質5%、20%の案内で実質10%くらい。品番を変えたり、在庫の残りを使ったり、逃げ道があったからです。
今回は逃げ道がありません。
- メーカーがほぼ全社そろって上げたので、振り替え先がない
- 副資材まで一律で上がったので、小さい工事ほど上昇率が高く出る
- 在庫を使い切ったあとの分から、案内どおりの値段で入ってくる
案内は18〜30%でした。実際に仕入れてみて、正真正銘の20%超えです。 「なんとなく上がった」ではありません。
5年前と比べると、ほぼ倍です
もっと分かりやすいのは、5年前との比較です。
同じものが、ほぼ倍の値段になっています。 前に書いた5ミリのポリ合板が1枚8,000円というのも、5年前の感覚では考えられない値段です。
これは実感の話ですが、統計でも近い動きが出ています。日本銀行の企業物価指数(2020年平均=100)で、2026年6月の水準はこうです。
| 品目 | 指数 | 2020年比 |
|---|---|---|
| セメント | 166.2 | +66.2% |
| 生コンクリート | 160.2 | +60.2% |
| 小形棒鋼(鉄筋) | 155.4 | +55.4% |
| 合板・集成材 | 151.5 | +51.5% |
| 製材 | 140.1 | +40.1% |
統計では1.5倍、現場の実感は2倍。 この差は、統計が全国の平均で、しかも大口の取引を含んでいるからだと思っています。1枚、2枚と買う小口の値段は、平均より上に振れます。
いずれにしても、「そのうち戻る」という水準ではありません。
単価のほうは、1割しか上がっていません
ここからが本題です。
材料が5年で倍になったなら、受注の単価もそれなりに上がっていないと計算が合いません。 倍とは言いません。ただ、5割でも4割でも、上がっていないとおかしい。
現実は、5年前の1割増しです。
念のため書いておくと、人件費のほうは公的にも上がっています。国土交通省が出す公共工事設計労務単価は、2026年3月適用分で全国全職種の加重平均が25,834円/日、前年度から**4.5%**上がりました。14年連続の引き上げで、25,000円を超えたのは初めてです。
つまり、材料も上がっている。人件費も国が上げている。それでも受注の単価は1割しか動いていない。
この差は、誰かが負担しています
差は消えません。どこかが吸収しています。
吸収しているのは、施工する側です。
前の記事で「受注はもう済んでいる。値段は決まっている。延びたぶんだけ粗利が減る」と書きました。同じことが、もっと長い時間軸で起きています。5年かけて材料が倍になって、単価が1割しか上がらなければ、その差はそのまま粗利から出ていきます。
うちだけの話ではないはずです。 同業の会社も、同じ材料を同じ値段で買っています。
それでも値段を上げにくい理由
分かっていて上げられないのには、理由があります。
1つ目。比べられるのは金額だけです。 見積りが3社並んだとき、比べられるのは数字です。「うちは材料を押さえてあるので確実に工期どおり入ります」は、金額の横に並びません。
2つ目。値上げの話は、切り出すのに時間が要ります。 管理会社の担当者にも、その上に決裁があります。「材料が上がったので」と言うだけでは通りません。何がいくら上がったかを、資料にして出す必要があります。そしてその資料を作る時間が、いちばん取れない時間帯にあります。
3つ目。断られるのが怖い。 これがいちばん正直なところです。長く付き合っている取引先ほど、言い出しにくくなります。
それでも、負けない!
改定をまたぐ案件は、その旨を伝えたうえで見積りを出し直しています。 黙って上げることも、黙って飲むこともしません。
そして、何がいくら上がったのかを、こういう記事の形で残すようにしました。 見積りに1行「材料費高騰のため」と書くより、実際の指数と、実際に買った値段を並べたほうが伝わると思っています。この記事も、そのために書いています。
最後に
糊は戻ってきました。値段は戻りません。
「品物が入らない」は一時的な問題でした。8割は解消しました。でも値上げのほうは、元に戻る仕組みがありません。 値下げの案内が出ることは、まずないからです。
材料は5年で倍、単価は1割。この差は、いま施工する側が持っています。 それがいつまで持つのかは、正直なところ分かりません。
出典
- 建設資材の価格推移2026|セメント・生コンが過去最高、鉄筋・木材は反落(日銀CGPI 5品目)|現場メディア(2026年6月時点。日本銀行 企業物価指数、2020年平均=100)
- 公共工事設計労務単価 令和8年度|加重平均25,834円・14年連続上昇|現場メディア(国土交通省、2026年2月17日公表)
- 建設コスト|日本建設業連合会
- 取引価格改定に関するお知らせ|サンゲツ(2026年4月13日発表)
