Notes

品物待ちで止まっています 値上げのあとに来た、納期の問題

お役立ち
「SOLD OUT」と書かれた黒板を持つ手
※写真はイメージです(写真AC

「材料が入ってこない」

「ホームセンターにもない!」

接着剤の棚が空になったホームセンターの売り場

7月以降、現場でいちばん多く口にしている言葉がこれです。金額の話ではありません。品物待ちで工事が止まるという話です。

前回の記事では、サンゲツと東リの価格改定を取り上げました。あれから1か月半。改定は予定どおり実行され、他のメーカーも出そろいました。そして、値上げとは別の問題が出てきています。

値上げは全社が出そろいました

内装材メーカーは、ほぼ全社が改定に踏み切りました。

メーカー 実施 上げ幅 対象
サンゲツ 7月1日 受注分 18〜30% 壁装材・床材・ファブリック・副資材・接着剤等
東リ 7月27日 受注分 20〜30% ビニル床材・カーペット・壁装材・カーテン・副資材
スミノエ 7月1日 受注分 15〜30% タイルカーペット・ビニル床タイル・カーテン・接着剤等
リリカラ 6月29日 出荷分 15〜30% 壁装材・カーテン・床材・副資材・接着剤
アイカ工業 6月1日/6月29日 出荷分 10〜30%/8〜30% メラミン化粧板等/壁装材・住器建材

木質建材も同じです。ノダが6月1日受注分からフロア類を15%(構造用ハイベストウッドは30%)、東洋テックスが6月22日出荷分からフローリングを10%以上、造作材を20%以上。

メーカーを変えれば避けられる、という状況ではありません。 前回「品番を固定しすぎない」と書きましたが、いま同等品に振り替えても、価格帯そのものはほぼ変わらないとお考えください。

いま止まっているのは、金額ではなく入荷です

ここが今回いちばんお伝えしたいところです。

サンゲツは価格改定より前、3月24日の時点で「商品供給量の減少および制限」「納期の変更および遅延」が起こり得ると告知していました。これが現実になっています。

  • アイカ工業は4月27日から、シーラーとタイル用接着剤の新規受注を一時停止しています
  • DAIKENも一部の造作部材について、注文数量の調整や新規受注の一時停止があり得ると告知しています
  • 複数のメーカーで、過去の購入実績に応じた出荷制限がかかっています

副資材が止まると、工事そのものが止まります。クロスがあっても、糊がなければ貼れません。

原状回復は、退去から次の入居までの日数が勝負です。材料が1週間遅れれば、空室期間もそのまま1週間伸びます。 家賃の1週間ぶんと、材料費の数%。どちらが大きいかは、計算するまでもありません。

原油は下がったり上がったりを繰り返しています

「原油が下がったのだから、そのうち安くなるのでは」というご質問をいただきます。

数字を並べます。OPECバスケット価格(週平均、1バレルあたり)です。

7月05日  72.91ドル
7月12日  74.41ドル
7月19日  83.23ドル
7月26日  93.80ドル  ← 7月の山
8月02日  88.19ドル
8月09日  78.86ドル
8月16日  84.90ドル  前週比 +7.66%

下落基調ではありません。 7月に3割近く上がって、8月に入って2週で下げて、また上がっています。2週間で15ドル動く相場です。

そのうえで、仮にこのまま下がったとしても、材料の価格はすぐには戻りません。理由が3つあります。

  1. 届くまでに時間がかかる … 原油 → ナフサ → 樹脂 → 製品と工程を経るため、原料相場が製品価格に反映されるまで半年前後かかります。いま出荷されている製品は、高値の時期に仕込んだ原料でできています。
  2. 円安の水準が続いている … 8月中旬のドル円は158〜160円台です。改定を発表した4月も同じ158〜160円台でした。円安が進んだわけではありませんが、戻ってもいません。 ドル建てで下がっても、円建てでは下がりにくい状態が続いています。
  3. 値下げは通知されない … 値上げには案内が出ますが、値下げの案内が出ることはまずありません。相場が戻っても、価格表は据え置かれるのが通例です。

むしろサンゲツは改定の案内に、さらなる原材料高騰があれば追加の改定もあり得ると明記しています。下がる方向より、上がる方向のリスクのほうが大きい状況です。

見積りへの影響は、前回の試算どおりです

前回、材料費が25%上がっても工事全体では8〜10%前後に収まると書きました。この考え方は改定後も変わりません。原状回復の費用のうち材料費が占めるのは3〜4割で、施工費と諸経費は今回の改定の対象外だからです。

ひとつ補足があります。今回は接着剤・巾木・パテといった副資材まで一律で上がっているため、小規模な工事ほど上昇率が高く出やすいという点です。1室だけのクロス補修のような工事は、材料が費用に占める割合が相対的に高くなります。

これから見積りを取られる方へ

見積書の日付を確認してください。 6月以前に出た見積書は、ほぼ改定前の価格です。そのまま発注すると差額が出ます。

着工が先の案件は、その時点で再確認を。 メーカー側が追加改定の可能性を否定していない以上、数か月先の工事は価格を固定しきれません。

そして、価格より先に材料を押さえてください。 品番が決まっているなら、在庫と納期の確認が最優先です。押さえておかないと間に合わない、というのが今の状況です。数%安い見積りを取るより、確実に入る材料を選ぶほうが、結果的に安く収まります。

当社は、改定をまたぐ場合はその旨をお伝えしたうえで出し直します。黙って上げることはしません。ここは前回から変わりません。

最後に

値上げのニュースは4月に出て、7月に実行され、8月にはもう話題から消えました。ただ、価格表は元に戻っていませんし、接着剤はまだ受注が止まったままです。

分かっていることと、まだ分からないことを分けてお伝えする。 それが私たちにできることだと思っています。原油がいつ落ち着くかは分かりません。ただ、いま何が入って何が入らないかは、その都度お伝えできます。


出典

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